わが原風景/岡部淳太郎
も固有の原風景や原体験を持っていることが多いのではないだろうか。詩人の原風景といっても、それは決して特異なものではないのかもしれない。ただ、自らが詩を書いてゆく中で、自らの原風景に影響を受け、また、原風景を出発点として詩を書いている人が、本人が意識しているかどうかはともかく、けっこういるのではないだろうかと思える。
僕の原風景。それはまだ三才ぐらいの頃、僕等家族が一時期住んでいた、茅ヶ崎市内のれんげ畑にあった。当時の僕は両親が共働きだったため、幼稚園ではなく、保育園に通っていた。僕は保育園を黙ってぬけ出し、ひとりで街をさまよい、近くのれんげ畑に行っていた。たったひとりで、紫色のれんげ草に囲まれ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(5)