小詩集「書置き」(四十一〜五十)/たもつ
囲んで
私の一部をはがしたり
何かを取り付けたりし始める
リフォームをするのだと言う
頼んではいない、と抗議すると
家の人に許可をいただいてますから
そう返される
父も母もすでにこの世にはいない
妻とはとっくに別れた
いや、そうではなかったかもしれない
元気な父と母
美しい妻と可愛い息子と娘
それに産まれたばかりの仔犬
優しい思い出が溢れ出して
幸せな気持ちでいっぱいになる
脳みそを取り替えられたようだ
新しい脳みその
どこか遠いところでそう思いながら
+
これは東三丁目に行きますか
本の表紙に描かれた
バスの絵を指差しながら
初老の女性が途方に
[次のページ]
戻る 編 削 Point(12)