こっそりと白の時代〜たもつさん詩集に寄せて/umineko
ファミレスで作品を書くらしい。ファミレスのだだっ広いテーブルを占有して、そのおよそ四分の一を几帳面に仕切り、ここからは立ち入り禁止とばかりに紙ナプキンを四角く囲って、その即席の結界の中で彼は作品を書く。ファミレスのおねえさんはナプキンの少し外に、氷の入ったグラスをしのばせる。恋はそういったふうに始まるのだ、としみじみ思う。
おそらく。確認には至っていないのだが、彼の呼吸器官は我々とは少し違った場所にあるのだと思う。どこか、頼りないグッピーのひとみのように、口をぱくぱくさせているえらのようなものが彼にはあって、そこが空気ではない何かを察知して、それが私たちの手元にほろほろと届く。和合さんあたり
[次のページ]
戻る 編 削 Point(18)