小詩集「書置き」(三十一〜四十)/たもつ
 
うに
懐かしい人の顔が
次々と浮かぶ
懐かしくない人も
懐かしい人になっていく

+

足がたくさん生えていたので
あるだけの靴やサンダルを
履かせていく
それでも足りなくて
近所の靴屋に買いに出かける
途中一足拾って
少し得した気分になる
どこに生えていたのか
なんて余計なことは考えずに
買い物は続く

+

今日も一日駅に
列車はやって来なかった
駅員は所定の事項を日誌に書くと
丁寧なお辞儀をして
夜勤の者に引き継ぐ
それから徒歩で他の駅へ行き
列車に乗って
帰宅をする

+

町の外れにはピラミッドがある
それが偉い人のお墓だ
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