小詩集「書置き」(三十一〜四十)/たもつ
ら
部屋の隅に寄せる
明日は部屋の外に出す
明後日は家の外にある
+
夜中にお腹がすいて
台所に行くと
すでに母は来ていた
父が大事に育てていた
カイワレダイコンを
二人して食べた
父は怒らなかった
笑うことしか
知らない人みたいに
+
枕の中を航行する
船の甲板で
あなたが手を振っている
もしかしたらそれは
尻尾を振っている
あなたの犬かもしれない
輪郭が曖昧なまま
睡眠という
悲しい航海は始まる
+
このエレベーターは
どこまで行くのだろう
既に最上階を越えて
それでもまだ
昇り続ける
忘れ物を置いていくように
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