はぐれる空も、見送る人も/霜天
 
ひとりになる
そんなことは結局、どこにもないのかもしれない
はぐれがちになる秋の、空の一片は
また明日と手を振るように
ぽっかりと抜け落ちている

秋の
すっと高くなる人たちの
忘れられない声がする


見送りの列の、その先の人は
とても静かな声だった
誰にも
気付かれない足取りで
駆け抜けるように通り過ぎては
また明日と、そこに零していく
さあ、と勢いよく手を打つと
はぐれた空の辺りへ
辺りへ



そこからの景色は逃げていかないので
可能性と言い出せばどこにも行けないので
抜け落ちた空の懐かしさを語れば
言葉が形にならずに零れていってしまう
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