宣告/落合朱美
 
手術に臨んだ
それなのに
癌は全て取り去ることが出来ないのだと云う

父も私たちもこれからずっと
爆弾を抱えながら過ごすのだと
思い知らされた


何故この人が死ななければならない
死にたい人なんか
他にもいっぱいいるじゃないか
何故この人を
父を


死にたいと云う人は
生死というものを選択肢として
まだ自分の意志で選び取ることが
出来るという証拠なんだろう

選択肢の片方が遮断されたなら
その時から生も死も
いきなり現実味を帯びて
目の前に迫ってくる

果たして人はその現実に
耐えられる生き物なのだろうか


あの日 
[次のページ]
戻る   Point(20)