宣告/落合朱美
手術に臨んだ
それなのに
癌は全て取り去ることが出来ないのだと云う
父も私たちもこれからずっと
爆弾を抱えながら過ごすのだと
思い知らされた
何故この人が死ななければならない
死にたい人なんか
他にもいっぱいいるじゃないか
何故この人を
父を
死にたいと云う人は
生死というものを選択肢として
まだ自分の意志で選び取ることが
出来るという証拠なんだろう
選択肢の片方が遮断されたなら
その時から生も死も
いきなり現実味を帯びて
目の前に迫ってくる
果たして人はその現実に
耐えられる生き物なのだろうか
あの日
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