宣告/落合朱美
 
日 寡黙だった父が
たった一言漏らした言葉

・・・・みっともなくたっていい
   俺は少しでも長く生きたい・・・・

その日以来
盲目であることを悲観して
毎日死にたいと零していた祖母は
ぴたりとそれを云うのをやめた



あれから二年
父はまだ生きている
老いはじめた身体を
鍛えながら労わりながら
ゆるやかに懸命に
生きている

私たちはあいかわらず淡々と
黙ってそれを見守るしかない日々

だけどその姿は
娘のひいき目で見たって
けっしてみっともなくなんかない




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