百鬼夜行/千波 一也
竹の林の向こうから
銀の鈴の音
リン シャラリン
夜露は
月の輪郭を
ゆるりとその身に吸い込んだ
川霧晴れて すすきが並ぶ
トン カラリン
独楽(こま)が寂しく倒れるような
トン カラリン
下駄が小石を弾(はじ)いたような
茂みの底に息をひそめて虫のまなこは濡れてゆく
大樹の落とした木の葉を踏んで
てんぐ
ひとつめ
ろくろくび
苔むす地蔵に一瞥(いちべつ)くれて
かっぱ
からかさ
がしゃどくろ
鴉は捧げる 魚のいのち
狸は捧げる 草の根 木の実
百鬼に
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