百鬼夜行/
千波 一也
鬼に献ずる盃そろえば
宴はいまにも
始まるだろうに
それは今宵もあらわれぬ
かくて
夜行は
常世に続く
のどの乾きと盲目の病み
いちばん暗い護りの途へと
長蛇は流れて
今宵が終わる
始終を見ていた梟(ふくろう)のした
茸(きのこ)の群れが頭(こうべ)を垂れて
夜露はリン、と
砕かれた
まもなく月はそらへと還る
ざわめく声を孕んだ風が
漂う雲を追い払い
月光こぼれる
蜻蛉が渡る
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