本/葉leaf
 
たちはたえず新しく洗われてゆき、みずからの体温を羞じている。一冊の本が、つめたい金属が溶かし込まれたかのように、光を増し、剥落する。本の中心でまなざす世界点はいくつにも分裂して、本をめぐる同心球たちは思い思いの方角へと散乱する。ひらかれたページに整列する文字たちを僕の眼がかなでてゆくあいだ、僕は体毛に、女の手が気流にふれてとじてゆく気配を感じている。

「……経験体の中央部のふくらみを迂回して、たえず水に溶け出している辺縁部へと走査針を走らせると、めくれあがった病の色があざやかに検知される。色に応じた内耳液をすみやかに滴下すると、病は中和され、赤宙にてくずおれる。また、経験体の吐き出す溶岩は、
[次のページ]
戻る   Point(6)