アル中男の逸話/壽瀬 チカ
 
らないのは、サイケデリックなショッキングピンクに黒のレースの高級下着がテーブルの上に置かれていて、レシートまで添えられている。その横にご丁寧にコンドームまで。「恋人にはこういうものを贈るものよ。」ステファニー言ったよな。え、俺、今なんて言った
ステファニー、ステファニーだ。息を抑えて思い出そうとしても、ステファニーの表情さえ及びもつかない。コンドームの箱を見ると封は切られている。驚いてゴミ箱をひっくりかえすが、ティッシュはない。わからないのは、サドマゾよろしく黒革のムチがある。「こんなもの誰が使ったんだ。」とため息。いったい何晩飲んでいるんだ。意気揚々とドアを開け階段を下りていく自分と朝日が憎憎
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