アル中男の逸話/壽瀬 チカ
一杯目に手をつけて・・・それから一気に記憶がかすんでいる。まただ、またやったのか。そこまできてはっとする。やっとつながりかけたのだが、あわてて車のキーと財布を確かめる。キーはある。財布を開けると二ドルしか入ってない。そんなに飲んだのか?ソファの足元を見ると、バーボンやウォッカの空き瓶が五、六本コーラの空き瓶二本、ビールの空き缶がぐしゃぐしゃにテーブルの上に重なっている。そんなに飲んだ訳じゃない。三百ドルが何でたったの二ドルなんだ? ???の連続にそこいらじゅうに散らかるものをつかんでみる。宅配ピザの空き箱、特大サイズ三つ、炭酸ソーダ水の空き瓶十本。ちゃんとレシートはあって勘定はあっている。わからな
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