組詩「二宮」/岡部淳太郎
はかない時を越えて
のそり のそり と
山は歩いてゆくのだ
それも道理と
私たちは話し合った
見下ろすと
何という眺め!
無数の振袖が
腕を失くした振袖が
浜辺に流れ着いていた
不吉な予兆
かつてこの町のすべてが水の下にあった
誰も知らない時代を思い起こさせる眺めであった
?
いまここ から
どこでもない場所へ
おまえの内部の移動には熱がない
花のような鮮やかさも何もないのだが
あの時の弾痕は
いまも屋根の中に
いまも心臓の中に
残ったままなのだが
日付の意義を薄れさせる
溶けたガラスのような
忘却の堆積の中で
ふぬ
[次のページ]
戻る 編 削 Point(7)