組詩「二宮」/岡部淳太郎
 
を語ることにしようか。ここでは、生きている者も、死んでいる者も、ここに留まる者も、ここから去っていく者も、等しく同じ光の下にある。永遠に遅れている者も、永遠に先走る者も、等しく同じ緩さの中にある。さあ、語ろう。この石に変った思い出をゆっくりと溶かして、それをわれわれの喉の中に流しこもう。

何から語ろうか。たとえば、小学生の頃、絵画教室の帰りに夜空に見た未確認飛行物体の光よりも明るい光を、いまはもう放つことは出来ないとしても、ただ、語ることに意味があるのだろう。ならば、語れ。自らを時の一部と化さしめて、語れ。小さな節目ごとに建つ道祖神のように、旅をする者の弱った脚をひと時休ませる、積年の石とし
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