見えていてすでに海は/藤原 実
はいい----と彼は思う。船長なのだから船と運命を共にするのだ。だが他の乗組員たちは・・・とりわけ若い水夫は気の毒だ。初めての航海でこんなことになるとは。しかしたいしたものだ。取り乱すこともなく死を覚悟して静かに待っている。若くても海の男なのだ。
十五歳無傷のままの少年の海と少女と花火の記憶
批評家たちは言葉の海が消えて以来、何も考えられなくなったらしい。毎日朝から晩まで甲板でテニスをしている。おそらくなぜ自分たちがここにいるのかさえ忘れてしまっているのだろう。いたましいが、死の恐怖に襲われることがないのだから、そのほうが幸せかもしれない。
<詩人>は----いまや「元」
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