見えていてすでに海は/藤原 実
型の詩人が棄てたコトバがたくさん流れてくるのさ」
「なんで棄てるんです」
「さあね’多作多捨’とかいう儀式があるらしいよ。ほんとのコトバはそうそう棄てられないから、代わりに模型のコトバを作って棄てるんだよ」
「なるほど。模型で手を慣らしてから、ほんとのコトバに細工するんですね」
「いやあ。このごろじゃ、ほんとのコトバは秘仏扱いらしい。それで、いちばん上手に模型を組み立てたやつが胴元になって賭場を開いてるそうだよ。こいつらは’はずれコトバ’なのさ。おや?海の色が変わってきたぜ!」
とうとう領海のはずれまで来てしまったぞ、と<明海>は憂鬱な顔で潮の流れを見ていた。これ以上は立ち入るこ
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