霧の様な死あるいはナルシシズムについて/立原道造を読む/渡邉建志
 
のマドリガル
虹にのぼれない海の鳥 消えた土曜日


?

しづかに靄がおりたといひ
眼を見あつてゐる――
花がにほつてゐるやうだ
時計がうたつてゐるやうだ

きつと誰かがかえつてくる
誰かが旅からかえつてくる


?

あかりを消してそつと眼をとぢてゐた
お聞き――
僕の身体の奥で羽ばたいてゐるものがゐた
或る夜 それは窓に月を目あてに
たうとう長い旅に出た……
いま羽ばたいてゐるのは
あれは あれはうそなのだよ

透明な朝の情景、というのはなんだか惹かれる主題で、この?なんかは、すごく雰囲気のある詩だと思う。なにしろ、「鷗のよう
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