霧の様な死あるいはナルシシズムについて/立原道造を読む/渡邉建志
 
風が吹いてゐる また雲がながれてゐる
明るい青い暑い空に 何のかはりもなかつたやうに
小鳥のうたがひびいてゐる 花のいろがにほつてゐる

おまへの睫毛にも ちひさな虹が憩んでゐることだらう
(しかしおまへはもう僕を愛してゐない
僕はおまへを愛してゐない)

またしても、何事が起こったのかよくわからない恋愛詩、第二聯の()は現代の私にはやりすぎの感があるけれど、最終聯の最終行が続いてくると、なんだかいい感じだ。長い繰り返し構造、その前にあるもうひとつの繰り返しがとても美しいと思う。
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また風が吹いてゐる また雲がながれてゐる
明るい青い暑い空に 何のかはりもなかつたや
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