パパの思い出/さくらいちご
離婚届を書く前にパパは「本当にいいんだね。」と訊いた。
家を出る前にパパは「一緒に暮らさないか。」と訊いた。
離婚届を提出する前にパパは「これで本当にバラバラになっちゃうよ。」と言った。
それでも、離婚をやめなかったパパが恨めしかった。
ひげが生えていたパパが大好きだったってこと
日曜日、どこかに一緒に行くだけで嬉しかったってこと
照れ臭いのも恥ずかしがり屋なのも私とパパが似ているからだと思うってこと
旅行から帰って来た時も空港まで迎えに来てくれてありがとうってこと
私の学費でお給料のほとんどを使ってしまってごめんなさいってこと
ホントは離婚しないでって言いたか
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