パパの思い出/さくらいちご
 

それでもパパは早めに出るから大丈夫と自信満々だった。
案の定の大渋滞に泣きそうな私はホントのホントの滑り込みセーフで空港に着いた。
「ごめんね。」と申し訳なさそうに謝るパパが恨めしかった。


私が大学生だった頃、パパは再び単身赴任で遠くにいた。
夕方の電話はかかってこなかったのか、私がその時間、家にいなかったのか。
女子高育ちの私はその頃初めての恋愛でほとんど病気で、パパのことなど忘れていた。
高いお金を払ってもらった大学は単位を落とすスレスレまで欠席した。
なのに、何も言わず、何も訊かないパパが恨めしかった。


私が社会人になって少し経った頃、パパは離婚した。

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