優れた戦意高揚文学「アンの娘リラ」モンゴメリー/白糸雅樹
からすると反社会的なものではない。むしろ尤もな部分があるにも関わらず、この小説では『月に頬髭』は変人として描かれている。また、徴兵制の是非を問う選挙の際、徴兵制を進める連合政府を支持する婦人は言う。「あの家の衆はけさ、伯父さんを納屋に押し込めて、連合政府に投票すると約束するまでえは出さなかったそうですからね。これこそ効果百パーセントですよね、奥さん」投票の自由はいともたやすく踏みにじられ、「大義」が賞賛される。
素朴な善意、素朴な愛、素朴な信念。作者の意図が反語として描かれたものでないからこそ、こうした陥穽には注意深くあらねばならないということを反面教師として教えてくれる傑作である。
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