指が落ちるように/千月 話子
 
フの魚〜
瀕死を装って 生き生きと私の心を傷つけた
もう、釣りなんかしないと 早朝にかすむ景色に・・・


光線が雲間で少し緩くなる堤防の小道から
子猫が ぴたぴたと付いて来るので
海を見たい私は 振り向き振り向き促すのです。
 「テトラポットのお家は素敵。
  飛び込むお魚、水の宝庫。
  気を付けてお帰り、
  黄金色が追いかけてくる前に。」
ぴたと止まった子猫のお座り 多分
意思疎通した もうすぐ夕暮れ
人差し指でなだめた さよなら・・・


堤防を歩き続けた橋のたもとで 流れ入る太陽が秋色に変わる頃
川は横に広がって もうすぐ海になるというのに
左岸の
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