指が落ちるように/千月 話子
岸の工場地帯に降りかかる 夕焼けが
煙突や鉄塔を金色に変えていくので 未来都市
飲み込まれそうになったから 目を逸らした
連れて行かれそうになったので 手で覆った
太陽は溶け、もう そこらじゅうに浸透して行き
かざした私の右手 小指から
順に肌色を奪って 足元へ
落ちる指 金色に流れ 流れ 海へと
意味などどうでもよかった。 けれど
出かける前に母が言った「夕日が落ちる前に帰りなさい。」
という言葉が後ずさりして 帰る私の足を速めた
美しい山々が連なる 右岸の景色に癒されながら・・・
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