入沢康夫(「現在詩」の始まり)/岡部淳太郎
 
駄ではないだろう。


やつめさす
出雲
よせあつめ 縫い合わされた国
出雲
つくられた神がたり
出雲
借りものの まがいものの
出雲よ
さみなしにあわれ

(「わが出雲」?より)


 全十三章に及ぶ「わが出雲」の書き出しの部分である。「わが鎮魂」での詩人自身による註によれば、三行目の「よせあつめ」から七行目の「借りものの まがいものの」のあたりは、この作品の構成の一面についての説明であるとのこと。詩人の故郷である「出雲」(現在の島根県)を舞台にして、「記紀」や昔話などの日本の神話を援用し、そこにさらにキリスト教の伝説や過去の文学作品からの引用を巧みに織り交
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