入沢康夫(「現在詩」の始まり)/岡部淳太郎
り交ぜてつくりあげられたのが「わが出雲」という長篇詩であり、冒頭の数行でそれを宣言することによって、読む者をこの複雑なテクストの中へと導き入れている。
このようにして始まった詩は、「友のあくがれた魂をとりとめに来た」(第?章)男の物語を中心に、その物語を隠れ蓑にして、さらにテクストの奥へ、神話の奥へと読者を誘ってゆく。冒頭で「まがいものの/出雲よ」と呼びかけられているように、ここには本当のものはいっさい存在せず、「本当の出雲」という中心の周囲を巡りながら、その中心には決してたどりつくことが出来ない、永遠の回転運動のような趣をもって読者を幻惑してゆく。膨大な引用を詩行の中に違和感なく溶けこませる
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