入沢康夫(「現在詩」の始まり)/岡部淳太郎
せる(あるいはまぎれこませる)とともに、形式の面でも文字が十字の形に配列されていたり(第?章)、行を追うごとに文末が一文字ずつ上がっていったり(第?章)、鏡文字を使用したり(第??章)と、様々な試みがなされている。それまで詩の世界で試みられてきた手法をひとつにまとめたようでもあり、頭で理解する以上に、肌でそのすごさを実感出来る稀有の作品であるといえる。
この一大記念碑のような大作の後、入沢康夫はいくつかの拾遺詩集を間に挟みながら、一冊でひとつの世界を構築するような優れた詩集をいくつも発刊してゆくことになる。『かつて座亜謙什(ざあけんじゅう)と名乗つた人への九連の散文詩』(一九七八年)では
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