入沢康夫(「現在詩」の始まり)/岡部淳太郎
 
六五年)での散文詩の完成は、後に与えた影響を鑑みても特筆に価する。
 六〇年代と言う激動の時代を締めくくるかのように、詩人は大作『わが出雲・わが鎮魂』(一九六八年)を発刊する。「わが出雲」と題された長篇詩と「わが鎮魂」と題された膨大な量の註からなるこの詩集は、日本現代詩の金字塔のひとつと言っても過言ではない。既に多くの詩人や批評家によって語られてきたこの作品に、いまさら僕が何かつけ加えることはないかもしれないし、僕の未熟な腕でこの複雑に入り組んだ作品を読み解くことは不可能なのかもしれない。だが、入沢康夫を語る時にはどうしても外せない作品であるし、あえていくらかの引用と説明を施しておくことも無駄で
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