入沢康夫(「現在詩」の始まり)/岡部淳太郎
な趣を湛えていて、わけがわからないけれどもどうしても惹かれてしまう。
{引用=昨日の昼屠殺された牛どもの金色の首が、北東の空に陣取つて、小刻みに震へながら、(今、何時だらう)わたしたちの、わたしの、中途半端な情熱の見張り役をつとめてゐる。わたしたちは、わたしは、藻のやうな葉をなま温い風にしきりに漂はせる樹々に背を向け、地べたで、安つぽい三十枚ばかりのプログラムを次々に燃やし、その光でもつて、石柱の表面にはめ込まれた縞瑪瑙の銘板の古い絵柄を読み解かうとする。少くとも、読み解かうとするふりをしてゐる。すでにいくつかの意味をなさない文字が、わたしたちの、わたしの、ひそめた眉の間から生まれて、燐
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