火の鳥/千波 一也
 


幾千幾万の人波は終わりを告げない


すれ違う一つ一つの顔を
忘れる代わりに
白の背中が
鮮烈に映える

本当は
黒であり
青であり 
赤であるかも知れないが
白で良い
すべて白で良い
わたしは
背中を確かに覚える

燃え尽きた色だね、と
正面の活火山は笑うだろうか



いま、火薬という名の運命が夏の夜空を駈けのぼる



四方を囲む山々は
その足音を跳ね返し
散りゆく音を一つに束ねて
轟音を織り
地へ注ぐ
そして歓喜は呼応する

密閉された盛夏の地上で
拍手と 舞と 万歳と

宵闇の底で活火山は
ちらり と 横顔
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