どこにでもある話 3/いとう
友人がなぜ電話番号を知っていたのかわからないと彼は言う)
彼女がどこかのビルから飛び降りたことを彼は知った
彼女の友人は
「あなたが殺したのよ」と言い放ってから電話を切り
彼の話はそこで途切れた
繰り返すが
彼に対しても彼女に対しても
非難も擁護もすることはできないそんな言葉は知らない持ちあわせていない
すでに起きた事実を
その現実を黙って受け入れるのが
受け入れるしかないのが
我々の現実でしかないのだ
数分の沈黙の後
「帰るから水を一杯くれ」と彼は言う
コップを割られるのは嫌なのでボトルごと渡すと
彼はミネラルウォーターに口をつけ
それから自分の頭にかけ(
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