どこにでもある話 3/いとう
「どこにでもある話」として片づける
確かに現象だけを捉えるならば
それは「どこにでもある話」に過ぎないのだけれど
「あなたしか見えない」とか
「私だけを見て」とか
「いつまでも一緒にいたい」とか
美しい言葉たちはともすれば独り歩きを始め
生み出した本人とその相手を飲み込んでいく
愛する恐怖と愛される恐怖
その2つから逃げている彼を責めるのは簡単だが
その資格を持つ者は少ない
当然自分にもなく
そして愛に逃げていた彼女を
傷つけられた後の彼女の行動を
責める言葉もかばう言葉も持ちあわせていない
彼がコップを叩きつけた前日
彼女の友人から彼に電話があり
(友人
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