名前のない色/巧
た
しばらくして
僕の名前は奪われた
「すまない。君よりずっと『灰色』らしい『灰色』が見つかったんだよ」
「じゃあ僕はなんと名乗ったらいいのでしょう?」
「名前がなくたって生きていけるさ」
僕は名前をなくして
どこに行っていいかも分からない
「さぁ、お絵かきをしましょうね」
「ここは『灰色』で塗ってね」
どこからか声が聞こえる
本当だったら僕が・・・
そんなことを考えるのも虚しいだけだった
何も考えず
何もしない日々が続いた
ある日、僕は小さな子どもに呼びかけられた
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