ひかりから みずから/木立 悟
生まれ ささげ 手わたし 去る
鏡のなかに増えてゆく
誰もいない家並みに
打ち寄せるすべての見えないもの
やわらかく 冷たく
悲しいもの
暗がりに立つ光の線が
自身さえわずかしか照らせずにいる
湿り気を伝う銀の粒たち
夜に迷い
夜を巡る
ひろく低い空の前で
両腕をひろげる葉のない枝
汚泥に倒れ伏した木々のため
光から水から来るもののため
雨のなかに立ちつくしている
文字の縫い目
言葉の抜け殻
どこかへ去った行方のかたち
支えることなく抄うかたちに
空へ向かい 腕をのばす
雨を飛び
ひとつのかたまりの姿で
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