波間へ/霜天
夏暮れ
そのようにして僕らは消えていく夏の肌をなぞるようにして
曲がることを許されない光の束に手をかざします
手のひらのどこか、真ん中から赤く発光していくので
吸い込んだものを返還するように
さよならの口のかたちで、ゆっくりと息を吐き出すのです
空が傾けば
街は眠るしかないので
夏が沈めば
子供達は帰るしかないので
そのようにして、並んで座るようにして
波間へ沈み込む僕らを見ています
裏路地から逃げていくように
裏路地から逃げていくように
追い掛けていく景色は僕らの、奥のほうではいつでも
変わらない一枚の絵で流れていくものだから
手のひらひとつで追い抜け
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