忘れんぼうの水族館/初代ドリンク嬢
 
彼女は
台所の食器棚から水色の壜を取り出すと
赤い線のところまで一気に薬を飲み干した
炭酸ジュースを飲むみたいに
おいしそうに

食器棚にあるのは水色の壜だけだった



「洗濯を干すのを忘れたわ!すぐに帰らないと」

水族館はもうすぐだというのに
「ダメダメ、今日干さなくちゃ、絶対だめ。だって洗濯よ?」

来た道を
同じだけの時間かけて家まで戻ると
彼女はバックも放り投げて
家の中へ入っていった

「洗濯を干すところは絶対に見ないでね」

僕も彼女の後を追って
彼女が洗濯を干すところを
こっそりと眺めた

太陽が彼女に近づいてるみたい
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