花とスピード/RT
 
った
見上げればアカシアは咲いていたのに
うつむいて歩く癖にいまさら気がつく
大人になった今、車の窓からは
アカシアの白い群れが流れる
小さな虫の大群のようで恐い
うつむいて歩いていてよかったのだ    


   *


花の連鎖はどこで止まるのだろう
いつだって最後の桜
最後のハナミズキ
夾竹桃、アカシア、きりがない
その覚悟

花の速度を憂う
私の速度もまた


   *


もう誰からも見えなくなったようだ
安心したし寂しかったし
そんな感情も見えはしない
だから泣いてみた
生まれて初めてのように貪って泣いた

すると頭を撫でら
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