花とスピード/RT
った
見上げればアカシアは咲いていたのに
うつむいて歩く癖にいまさら気がつく
大人になった今、車の窓からは
アカシアの白い群れが流れる
小さな虫の大群のようで恐い
うつむいて歩いていてよかったのだ
*
花の連鎖はどこで止まるのだろう
いつだって最後の桜
最後のハナミズキ
夾竹桃、アカシア、きりがない
その覚悟
花の速度を憂う
私の速度もまた
*
もう誰からも見えなくなったようだ
安心したし寂しかったし
そんな感情も見えはしない
だから泣いてみた
生まれて初めてのように貪って泣いた
すると頭を撫でら
[次のページ]
戻る 編 削 Point(18)