ウミガメ/芳賀梨花子
いに
お店は人でいっぱいだった
誰もが明日から
秋がくることを知っているみたいに
騒いで飲んで
別れを惜しんでいるように見えた
お店が終わると
いつものように
砂浜に抜ける地下道
いやな予感がした
不穏な空気
悲鳴にならないうめき声
醜い罵声が
思わず走り出した
亀ちゃんは数人に囲まれて
ボロ切れみたいに
やられてる
地下道に私の声が響く
叫び声が
共鳴し増幅されて繰り返し
地下道も叫ぶ
気がついたら
二人きりで
亀ちゃんは血だらけで
でも、笑ってて
アイガトウといった
緑亀のマリリンは死んでいた
私は、悔しくって
無性に腹がたって
亀ちゃ
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