子猫のシビット/芳賀梨花子
 
とだけが
頭の中を支配していて
上司の言ってることも得意先からの電話も
どうでもいいことに感じて
昼飯さえ喉を通らずじまい
終業ベルが鳴るや否や僕は一目散

シビットはいなかった
部屋の中はいつもの僕の部屋
いるはずないなって思ってたけど
というか、シビットの存在自体が
僕の幻想だったのかもしれないと
酒を飲みすぎた自分が
なんだか情けなくって
僕はベッドに倒れこむ
ふと、鼻を突く昨夜のシビットの残り香
僕は衝動的に跳ね上がりシビットを探しだす
戸棚の中もクローゼットの中にもいない
ソファーの裏にもバスルームにも
でも、二時間後
僕はマンションの下のさえない
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