Saudade./芳賀梨花子
 

声を埋めておこう
でも、大地は思ったよりやさしくない
乾いた土が舞う
あの羽毛のように
ただし、それは美しくはなかった
目にしみるだけだ
うかつにも涙がこぼれ
父に似た蜃気楼が浮かぶ
きっと、これが、父との最後になるのだろう
関節を失った骨のようなわたしは
背負ってきた荷を降ろす場所を見つけたのだ

「木菟の憂いは今に始まったことではない」

森に迷い込んでいた
旅というものはこういうものだ
終わったかと思ったら
こんな羽目になる
何時間も、いや何日も
わたしは歩き続けている
もう、いいかげん辟易としてきて
暇つぶしに話し相手がほしい
などと思って
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