Saudade./芳賀梨花子
ここで下ろして、と風に頼む
風はいぶかしげに
わたしを大地に下ろす
荒れ果てた灼熱が
焼き付ける、じりじりと
ここに横たわる現実も、じりじりと
長袖を着なくてはいけない
せめて、あの女たちのように
布をまとわなければ
無防備な肩がやられていく
それはまるで
失望というものが
あんがい簡単なことだ、と
教えてくれているようだ
身体は渇き果て
わたしは白くなるのだ、きっと、ここで
罪人にはちょうどいい死に様ではないか
だけど、届けようもない声だけは
この大地に埋めておこう、たいせつに
誰かが掘り起こして届けてくれるやも知れない
わたしは土を掘る
爪が折れても
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