Saudade./芳賀梨花子
 
てくれた
これで、もう寂しくはないだろう、と男は言うが
心が無いので寂しいかどうかさえわからない

「砂州が恋愛の温床であるという認識は
遠い昔の学問において否定されていない」

肥沃な身体をもてあまし
蠢く怪物たちが
出会う場所が砂州で
深い溝を覗き込んでは
そのあいだに指を滑り込ませる
毎夜営まれる
その行為は果てしなく続くので
わたしは教えてあげた
肉切ナイフでこそげとるような
残忍さではなく
あくまでも卵の殻をむくような
そんな行為で怪物は眠りに落ちるということを
そのすきに怪物たちの枕元で
強奪犯が横行するかもしれないが
たとえ、そうなっても

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