Saudade./芳賀梨花子
わたしは叩きつけられたそれに
またがり次の街へ行こうと思う
「エニセイ河とパイプラインは郷愁を誘うものである」
大河のほとりで天秤をもった男に出会った
量ることが唯一の術だと信じている男
わたしは、試しに、その男に心を預けてみた
必死に量ることに徹する男
量れるはずの無い心を
天秤にのせて量り続ける男
あまりにも滑稽で
わたしは気の毒になってしまったので
心を返してもらおうと頼んでみたのだが
量り終わるまでは返さないという
わたしは途方に暮れるしかないではないか
男も、それでは、この哀れな旅人が
あまりにも気の毒だと思ったのか
小さな男の子を手渡してく
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