ムーンライトながらノート/渡邉建志
とにした。立つのは自由だけれど、たぶん最近の流行はムーンライトながら臨時の通路で立つことからは遠くなっただけなのだろう、などと自分に都合よく考えた。この通路にいないだけで、車両が違えばだれかいるかもしれないではないか。流行おくれの誰かさんが。しかしそれを確かめにまわる勇気はない。とりあえずトイレに入った。隠れたのではない。尿意を催した「気がした」のである。11時55分。電車が動き出す。電車が駅を出てからすぐの時間帯は、車掌氏が車両を回り切符を確認する時間帯だ。トイレから出るのは危ない。しばらくトイレにいることにした。いつまでトイレにいようか、と思った。あんまりずっとトイレにい続けると、その横を何回
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