ムーンライトながらノート/渡邉建志
顔をしているのがいちばんだと考えた。
車掌「どこから乗車ですか?」(怪しむ目)
僕 「品川です」
車掌「今までどこにいたの」(偉そうに)
僕 「ト、トイレです」
車掌「隠れてたんか」
僕 「い、いえ、下痢がきつくて」
というような会話のシミュレーションを一人で行いながら、車掌が来るのを待っていた。「霧の中の風景」みたいだなと思った。あの映画では少年たちはおし黙ったけれど、僕にそんな芸当はできないし、おし黙ったら余計怪しまれて3倍取られることになる。車掌はなかなか来なかった。iriverはシドンがスクリャービン3番を弾いていた。あまり良い演奏ではないと思った。何回かドアが開いて
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