ムーンライトながらノート/渡邉建志
 
いて、そのたびに驚くのだけれど、車掌じゃなくて客だった。客は怪しい目で僕を見た。僕はこんな目で大垣まで見つめられ続けるのはたくさんだ、と思った。

ついに車掌氏があらわれた。白いヒゲのおじさんであった。

車掌氏「切符見せてください切符」
僕  「はい」(18切符)
車掌氏「指定席券は?」
僕  「いえ、持ってないんです。通路に立っているのはダメなんですか。」
車掌氏「全車(ぜーんしゃ)指定なんですよ、全車(ぜーんしゃ)。
    ここもダメ。」
僕  「降りなきゃダメですかねえ(この夜のなか)」
車掌氏「まあ待ちなさい。調べてあげるから」

車掌氏は手元の機械をまさぐる
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