幽閉の森/千月 話子
 
 闇
白く剥がれ落ちた部分から覗く月が
獣の目のようにじっと 見ていた
狙っているのは あちらか・・こちらか・・

滴るとか零れるとか流れるとか
もう、これ以上言い尽くせない位見てきた赤を
まだ体内に宿す自分が
ある時は誇らしく ある時は憎い

元首よ、あなたの命令に従います。
 私は、誇り高き 日本国軍兵士なのです。
元首よ、あなたの命令に背きます。
 小動物の柔らかい背を撫でる少女の口ずさむ
 子守唄を聞いたのです。
元首よ、あなたの命令はもう聞こえません
 私の胸から暖かな血が溢れ ほとばしるのです。



弱き者へ その目を向けるなと
遥か昔に教わ
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