幻想の王国 あるいは 詩権神授説/佐々宝砂
あたしは誰も殺したくない、自分のほかは。
あたしはナイフを投げあげる、
おちてきたナイフのやいばをつかめば、
したたる血、てのひらに鼓動、それから痛み。
あたしは痛みに酔う。
大地はあたしの血を飲んで酔う。
酔えるうちは酔うがいい、
貪欲な、痩せた赤土よ。
酔いに澱んだ目をみひらいて、
あなたはあたしの血を見ている。
ほしいの? ほしいのならあげる。
もちろん無料(ただ)で。
だって、常に酔っていなければならない、と
あたしの愛する詩人が言ったわ。
3.私の青空
私の青空はどうやら特別製で
や
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