カルパチアからエマオまで/がらんどう
 
たのはなんの話ですか」と訊ねると、二人は暗い顔をして立ち止まった。クレオパは答えて言った。「エルサレムに滞在しながら、この話をご存じないとは。その名を出すのも恐ろしいナザレのイエスのことですよ。三日前、祭司長たちが苦労して十字架に掛けたというのに・・・。今朝、仲間の婦人たちが彼の墓が空っぽであるのを見つけたのですよ。奴は死に際に必ず甦ると予言していましたし、悪いことが起こらなければいいのですが・・・」。

目指す村へ辿り着いた一行は共に宿へ入り、一緒に食事の席に着いた。「予言を信じることができないのは、物分かりが悪いからだ」、席に着くやいなや黒服の男はそのように語りはじめた。二人が顔を見合わせ
[次のページ]
戻る   Point(1)