「天使喰らい」の可能性について/がらんどう
 

マルコ・ポーロは例の書物の中で、南方に産する果実の一つとして「楽園リンゴ」という名前を挙げている。これは当然ながら「創世記」のエデンの園のイメージを南方に重ね合わせた楽園幻想の産物であるが、「創世記」の中には「知恵の実」をリンゴだとする記述は実際には存在しないことはよく知られている。「知恵の実」をリンゴだとする思いこみは、その図像に由来していると言われている。そもそも絵画において「知恵の実」がリンゴとして描かれるのは、ギリシア神話において「黄金のリンゴ」が知性を守護するアテナイ女神のアトリビュートであり、アタランテーの物語の中で彼女を誘惑する役目を担っているということからの連想である。そしてま
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